ブキ・ティマ自然保護区(Bukit Timah Nature Reserve)に行ってきた その1
シンガポールのありのままの自然、見てみたいな。
こちらに来てしばらくして、ふと思ったのがこれでした。
というのも、シンガポールの街の草木って、大体人工的に植えられたもので、外から持ってこられたものも多いんですよ。
シンガポールという国を作り上げたと言っても過言ではない初代首相リー・クアンユー氏が、1960年代に緑化政策を提唱し、
色んな街中の場所のニーズ(光が当たらない、水が乏しいなどなど)に答えて中南米、アフリカなどなど、とにかく熱帯・亜熱帯地域で適切な植物を探して持ってこさせることで街の緑が成り立ってるんですね。
それはそれですごいことですし、実際街を歩いていても気持ちが良い&楽しいんですが、シンガポールという島がもともとどういう姿をしていたのか、どんな緑を湛えていたのかは想像ができないわけです。
シンガポールが本来持っていた緑を見に行こう。
調べてみると、シンガポールには主に4つの自然保護区があることがわかりました。
- ブキ・ティマ自然保護区
- ラブラドール自然保護区
- 第二次世界大戦の時の遺跡が残る(イギリス軍が使用した跡)
- 海寄りの場所にある?
- スンガイブロー自然保護区
- マレーシアとの国境付近にある
- 湿地
- マングローブが見られる
- セントラルキャッチメント自然保護区
- 二次林らしい?
個人的にはブキ・ティマとスンガイブローが気になりますね。良さそう~~。
てことで、
行ってきました。
ブキ・ティマ自然保護区です。上の写真は横を通るでっかい道路にかかった歩道橋から自然保護区を撮ったもの。
外から見ても森ですね。ワクワクする~~~!!!
こんな感じで一帯に入っていけるようになっています。
実際の自然保護区はもうちょっと先にあるので、ここから入ってしばらく歩きます。
ここが自然保護区の入り口です!テンション上がる!!!
ちなみに右側にはトイレ(割と清潔)、左側にはビジターセンターと、Hindhede Nature Parkにつながる道があります。
ですが今日の一番の目的は自然保護区なので、まっすぐ進みましょう!
さて、森に入ってみて一番最初に感じたことは……
既視感あるな~
ということでした。Singapore Botanic Gardensで見た熱帯雨林のコースそっくりです。
基本的に木が高くて、階層構造が超充実していて、
着生やつる植物がよく目立ち、とことん密になっている。
林床の落ち葉の様子もよく似ていました笑 Botanic Gardens、がんばって再現してるんだなぁ。
とはいえこちらはリアルな森です。やはり本物はちょっと違うなと思うところも多々ありました(それこそ階層構造はこっちの方が充実してるな、とか、奥行きがあるな、とか。ギャップも沢山あったり……)。
そんな感じで歩き始めたときはこう、「わ~~本物のシンガポールの森だ!」と感動していたんですが……
ちょっとね……
つらい!!!!!!!!!!
つらい気持ちになってきました。
というのもですね、ひたすら登り坂が続くんですよ。しかも割と急なの。
よく考えたら、ここ山なんですよね。「山とか言いつつ163mしかないから低いよね!」という記事ばっかり読んでたせいで、低いのか~ってなめてたけど、163m上に上がるのって大変よ?
アホなので、平らな道をふらふら歩けると思っていたら全然そんなことはなく。あまりにも坂道がきつめなので、登るのに精一杯になってきました。汗も止まらん。
さらにですね、妙に人が多いんですよ。平日狙っていったのに、案外沢山いるんですね。
それらの人が大声で話すわ、音楽やラジオを大音量で流すわ、電話するわ……自然保護区なのに静かにできないのか???という気持ち。
恐らくですが、地元の人はウォーキングとか運動のつもりで来ているので、原生林とか自然保護区とかあんまり考えていないのでしょう。後ろ歩きで歩いてる人も沢山いました。そうなると騒音もしょうがないのか……。
こんな感じで、登るのに一生懸命にならないとだめな状況と、人の流れのせいでうかうか立ち止まっていられないという状況に陥ってしまい、途中から全然観察ができなくなってしまいました。もうそういう精神状態じゃないんだわ。
あんまり色んなことを考えててもしょうがないので、自然観察はできる限りにしておいて、登頂を目指すことを最優先にしようと決心しました。切り替えも大事よな!
とはいえ原生林なので、そんな「ながら自然観察」でもかなり色々発見できました。
例えばこちら!ハクオウチョウ(White-crested laughingthrush)。
ガサガサ地面から音がするな、と思ったらいました。
地面を移動しながら、落ち葉や枝を咥えてはぶん投げるという。食べ物を探しているのでしょうね。
ちなみにこの子はペットとして持ち込まれたものが定着した子らしいです。ので、もともとのシンガポールの森にいたのか、と言われると困るけれど、森が豊かなんだから来るよね。しょうがないよ。
こっちに来て初めて出会えたので個人的には超嬉しいですね。
フタバガキの幼木がそこら中に生えているのも確認できました。息絶え絶えでもわかるくらいフタバガキだらけ。
フタバガキ、見分けられているのかちょっと不安はあるけれど、きっとたぶんそう。
自分の目が間違っていなければ、本当に大量にフタバガキはありました。
熱帯の森を構成する主な種なんだな、と改めて思いました。
でっかい木も勿論あります。カーテンすごい。
意識朦朧としながら山を登っていったわけですが、やっぱり日本の山とは色々違うなぁ、と思いました。
木の高さも構成樹種も勿論そうですが、目に入る葉の形や分厚さや大きさでも「違い」をものすごく感じます。幹の雰囲気も違う。
あとは地面の落ち葉の様子。ドングリがないよね。ほとんど葉っぱで、時々謎の実(大抵齧りかけ)があったりするくらいです。
幾つかの木にはプレートがついています。
この木は見てちょっとびびりました。Biku Bikuって名前すごくないですか?
調べてみると、なんとハート型の実をつけるらしいですね。熟すと黄色から赤色に変わるんだって。
それは是非とも見てみたい!どこに実があるのかな、と幹の上を見てみると……
見えるかいな。高すぎよ。
面白すぎます。
自然保護区内には幾つかのルートが用意してあるので、歩いていくと道が途中で分岐します。
山頂に一番近いルートは超急な階段になっていました。強制太腿上げイベント……。
今は少しでも早く山頂に着きたいのでこれを登ります。
延々と続く階段を登るので、なんだか日本の神社のような気がしてきました。植物相が違いすぎるけどね。
そんなこんなで無事山頂に到着!やったー!
山頂からの景色をぐるっと。
森でしたね。
なんの風景も見えないや。山頂というからには、下の世界を見下ろせたり、遠くの景色が見えたりするんだろうかと思ったけど、そんなことはない。森だけだ。
とはいえ登頂できたのは嬉しいですね!
しばらく休んでから下りへGO。
下りは割と人が少なくなったので、思うがままに色んなルートを歩き回ることができました。
加えて、Easyなルートを反れるとほとんど人がいないという発見もありました。人の声が聞こえない自然本来の音が堪能できる上、立ち止まり放題です。超満喫できます。これがほしかったのよ。
あんまりどの道かとか考えずに、気になった道を好きに突き進んでみました。
このタイプのつる植物が生えてるの初めて見たかもしれないな、というつる植物を発見。葉っぱが大きすぎる(私の顔より余裕ででかい)。
つるの部分が背骨みたいになってるのも点数高いですよね。
Merombong。ぼっこぼこの木。
上を見上げると果てしなくでかいです。
この木は老いると、内側から消えていって最後空洞になっちゃうんだって。
実際この木も空洞になっていました。でも葉っぱはわさわさ生えている。大丈夫なのかな?
でっかいヤシみたいな木がでっかい双子葉類の木に負けず劣らず並んでるの、熱帯って感じだなぁ。
これぞ板根という板根も沢山あります。
そこら中で見つかる板根があまりにも良すぎるものばかりなので、写真を撮りすぎて、板根コレクションができてしまいました。紹介しきれないので載せませんが……。
自分がしゃがんだらかくれんぼできるくらいの板根が大量にありました。
これはTerap。つける葉の形が2種類あるみたい(幼いときと成熟したときで違うらしい?)。
実もいくつか落ちてるのを見ました。大体かじられてた。
ごつい植物。木なのか?つるなのか?木なのか……???
自分の腕より余裕で太かったので、振り回されたらたまんいなと思いました。
上を見上げるとターザンの世界です。
これだけつるとか根とかよくわからないものが上からぶら下がっていたら、サルとかリスとかも移動しやすいだろうな。
途中で池?を発見しました。
お金を投げ入れる習慣はどこにでもあるのだろうか……。
あんまり良くないと思うんですけどね。自然保護区だし。
と、池の周りでぼーっとしてたらなにかが飛び出してきました。
ん?トカゲ???でもニホントカゲより大きい!し、でっぷりしてる。
手のひらより大きいくらいの大きさです。
この子はEutropis multifasciata(Common Sun Skink)という子らしいですね。
しばらく歩くとどこかで見た顔が。
Singapore Botanic Gardensにもいたオオトカゲです。Clouded monitorとかいうやつ。
ここでも一生懸命土を掘っていました。
土壌ごとばりっと倒れている木を発見。
やっぱり熱帯の土壌は薄いのかなぁ、と少し思ったり。
でもそんなに倒れているものを見たこともないし、これだけで判断できるものではないですよね。
しばらく歩いていると、急に匂いが変わる場所がありました。
なんかくさい、と思ったら……突然周囲にサルの集団が現れました。
群れだったようで、20匹はゆうに超えるカニクイザルが平然と隣を過ぎていきます。
目を合わせるとバトルになるので、目を合わせないように気をつけたんですが、無数にいたせいで一匹と目が合ってしまいました。
瞬間、追いかけられました。一生懸命逃げましたが、本当に怖かったです。飛びかかられたら終わりだ!と思いました。
皆さんも気をつけてください。
さて、今回の旅で自分は一つ目標がありました。
それは、「フタバガキの実を探すこと」です。
前回、Singapore Botanic Gardensでは、一生懸命探したものの見つけることはできませんでした。そもそもフタバガキの見分けも微妙だったしね。
今回は見分ける目ができたと思うので、絶対にあの双葉の実を見つけるぞ!と意気込んできたのです。
ですが、どれだけ歩いても、立ち止まって探しても、全然見つからない……。
なんでも、フタバガキは数年に1回実をつけるようで、それもバラバラではなく一斉開花とかするらしいんですよね。
だとすると、かなり前に実を落としてしまって、もう既に成長したか分解されたかになってしまったのか……???
と、諦めかけていました。
すると、諦めた私の目の前に立派なフタバガキが。
こんなにでっかいなら絶対実もつけたことあるだろうし、周りにあるのでは!?と一生懸命しゃがんで探しました(道からは出ていません!)
すると!!!なんとフタバガキの実を発見できたのです!!!
これはまさしくあの「フタバガキ」!!!!!!!!!一日かけてやっと見つけられました。嬉しすぎる!!!!!!!
持ち上げて観察しようと思ったんですが、ちょっとつまむと何故か抵抗がある。え?と思ってよく見ると、根っこが既に伸びていました。
ちゃんと発芽したんだね!ていうかこんな風に伸びるんだ。
教科書では学べない知識が得られて大興奮です。
周りは立派なフタバガキだらけだったので、それもよかったのかもしれません。幾つかフタバガキの実の残骸(大抵羽の部分がちぎれて残っている)を見つけることができました。
自然保護区のものを持ち出すのはダメなので、この森をどんどん良くしてくれますように、と願いつつ、フタバガキの実たちにお別れしました。
見れただけでも万々歳よ。
取り敢えず散歩した感が味わえる動画を貼っておくね。音も是非聞いてみてね。
ということで、また長くなってきたのでここらへんで一旦終わります。
次回は山を降りて、お隣のHindhede Nature Parkに向かいます。