生物学好きのまいんが、シンガポールで生活する中で出会ったものをひたすら記録します。

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Sungei Buloh Wetland Reserve行ってきた その2

前回はこちら↓

minesg.hatenablog.com

 

 

延々と道なき道を歩き、どうにかSungei Buloh Wetland Reserveに到着!

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ビジターセンターの周りの池には、いかにも熱帯っぽい魚が泳いでいました。

写真ではわかりにくいですが、きんきら輝く赤と緑の縞模様の魚もいました。すんごい。

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ビジターセンターの屋内でふっと上を見上げると……

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なんだ!?!?なんかぶら下がっている!?!?!?

Cynopterus brachyotis、別名Lesser Dog-faced Fruit Batというらしいです。

そこそこの大きさがあり、熟睡している子もいれば、うごうごしている子もいました。よくこんな逆さ吊りで頭に血が登らないなぁ。ももふもふで可愛いですね。

 

ビジターセンターを通り抜けるとすぐにBuloh Besar Riverが出現します。

両脇がマングローブに囲まれた、絶景ポイントです!!!!!!川もでっかい!!!!!

海側を見るとマレーシアが望めます。

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あぁ、めっちゃ支柱根と筍根が見える……

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ふと目線を橋の下に落とすと、なんとでっかいイリエワニさんが日光浴の最中でした。

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初めて見る野生のワニに大興奮!2mはあるどっしりした巨体、ゴツゴツさがたまらん……。

口をカパーと開けたままじーっと全然動きません。放熱のためかな?と思うのですが、調べてみると諸説あるみたいですね。

口、開けたままで疲れたりしないのかな……ワニの口ってどういう筋構造になってるんだろう。本当に微動だにせずずーっと開けてました。あれだけ巨体だと動くのにも沢山エネルギーが要るんだろうし、動かない方がいいのかもしれないですね。

 

間近に見る筍根、すごいです。思った以上に針山です。

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勿論誰の根なのかはさっぱりわかりません。

 

ここからは、川と湿地に挟まれたルートを延々と歩いていきます。川サイドを見るともうひたすらヒルギの支柱根です。

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何種類かいそうな気はする。気はするんだけど、どれがなんなのか見分けがつきません。同定力も知識も足りない。

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あと、支柱根の形をしていない木も案外混じっています。これらも汽水に強い植物なのでしょうか?マングローブって支柱根を持つヒルギの独断場だと思いこんでいたので、意外と複数種、支柱根じゃないものがいることは驚きでした。

家に帰ってから気になって調べてみると、やっぱりかなりの種類の植物がここにはいたみたいです。支柱根じゃなく、板根タイプの植物もいるし、勿論ヒルギ以外もいるんだって。知らなかったなぁ。

species list of mangrove plants in singapore

とはいえ、やっぱり陸地の原生林に比べたらずっと種数は少なそうですね。

実際、原生林を歩いているときよりも、景色の変化に乏しいと言うか、

「どこまで行っても同じ景色しか見えないな……」という気持ちになりました(原生林はめちゃくちゃ種数が豊富で、歩いていても常に違う種・景色が見えている感じ)。

それだけ特殊な環境で、特化した植物のみが生きるのを許される環境である、ということだと思うので、個人的には大変面白い体験でした。

原生林と比べた話をもうちょっとだけすると、林冠の高さが全然違いますね!原生林の方がはちゃめちゃに高いです。見上げると首が痛くなるんですが、こっちは親近感のある高さでした。あとは暗さというか、密度が違います。原生林はみちみちで暗いですが、こっちはスカスカで明るかったです。着生とかつる植物も少ないんじゃないかな?

 

と、楽しく歩いていると唐突にでかい影が出現。

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50cmをゆうに超えるでっかく、どっぷりした謎生物。初めて見ました。恐らくビロードカワウソです。

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遠くの方でゴロンゴロンと身体を砂に擦り付けてから、さっさと向こうに走り去ってしまいました。一瞬の邂逅でしたが、めちゃくちゃ感動しました。

とはいえ、思ったよりでかい。でかいし、重量感すごいですね。

去年、シンガポールの植物園でカワウソに襲われて大怪我した人がニュースになっていましたが、あのサイズだと私もやられるな、と思いました。

自然界はいつだって怖い。正しい距離感を保たなければ。

 

まだまだずーっと同じような景色が続きます。

支柱根と筍根。ここの気根は他の場所よりもちょっと太くて角っぽい気がするぞ。

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絡まりまくった支柱根。

こんな大荒れ状態みたいにもなるんですね。知らなかったよ~~。もっと一個一個の木が独立してるもんだと思ってました。

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ルートの一番端っこあたりに来ました。

河口付近?に当たると思われます。ヒルギトンネルじゃ~。

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両脇のヒルギを喜々として眺めていたら、おや?花と蕾っぽいのがある??

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てことは胎生種子もあるんじゃない!?と思って頑張って探したら、ありましたありました!!!

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大漁です!!!!!!!!!!!!!!感動!!!!!!!!

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葉、根の様子、花、つぼみ、胎生種子の情報的に、恐らくRhizophora mucronataだろうと植物の専門家の人に判定してもらいました!ロッキーさんに感謝。ヤエヤマヒルギに似ていますが、同属の違う植物なんですね。*1

ちなみに胎生種子というのは、果実の中にある種が、まだ木から落とされない内に発芽して成長し始めるー果実の中で育つ種子のことを言います。この写真の茶色い帽子みたいな構造の中に恐らく種子があって、そこからニューっと茎と根が伸びてきているイメージです。緑のぶらんとしている先っぽが根なんですね。胎生種子という名前からも想像されますが、種子の成長の栄養は母体からもらっているようです。面白い構造だなぁ。

この種の場合、胎生種子が1m以上にも伸びて、地面に先端がつくと枝から切り離されるようになっているんだそうです。すごすぎますね。見つけた胎生種子軍団でも、短いものは数cm、長いものは40cmは超えていました。これは見れて嬉しかったなぁ。

 

この土地でも最も海に面した場所には、Rhizophora mucronataではなさそうなヒルギが生えていました。誰だろう?根の形的にも、枝の伸び方的にも葉の大きさ的にも違う気がするんですが……。すごくこじんまりした木でした。1mちょっとくらい?

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この木を眺めてたら、急にスマホが震えて、なにかと思ったら「あなたがマレーシアにいることを検知しました!通信使えません!」みたいな通知が来てました。え!?と戸惑ったのですが、実はこの場所だとマレーシアの電波が飛んでるらしいです。すご。でもマレーシア行ってないんよ。シンガポールの通信使わせておくれ。

Rhizophora mucronataの根を見たら、ぶら下がって先が地面に付いていないものが沢山見つかりました。支柱根は、幹や枝から不定根を出して泥に着地させることでどんどん形作られていきます。

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そういう根の作り方が垣間見られてとても嬉しい!

教科書や図説の写真で見ていただけでは感じられなかったヒルギの生き生きとした姿を体験できて、心が震えます。いや、本当に感動ものですよ!胎生種子まで見れたのは恵まれていました。

 

これは全然関係ないワニと見せかけてただの倒木。

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上の写真だと若い木ばっかりで、あんまり筍根もないんですが、

ヒルギっぽいものがないのに筍根だらけの場所もあります。不思議だなぁ。上を歩いたら痛そうだな。

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膝根みたいなものもあるのかなと思っていたんですが、実際目についたのは筍根ばかりでした。膝根を持つ種はこの場所にはいないんだろうか?そんなわけはないと思うんですが……。自分が膝根を見分ける目がないのか。その可能性の方が高いですね。

 

あんまり触れてこなかったんですが、歩道を挟んで川の反対側は湿地がずーっと広がっています。湿地はかなり開けた状態になっていて、鳥が沢山来ていました。渡り鳥も多くいるのでしょう。でもちょっと遠すぎてどれが何だか分からなかったです。

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展望台があったので登って湿地を撮ってみました。物凄く広大なことが伝わるでしょうか。

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川側の植物はひたすらヒルギをはじめとする似たようなやつばかりでしたが、湿地側は川側の植物とちょっと相が違うのではないかなと感じました。ちょっと種が豊かになるというか……生えてる植物が違うんだと思うんですが、同定力が足りないので何がいて何がいない……みたいなのははっきり言えません。

湿地側はLicuala Spinosaと思しき植物が生えていたり……

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こういうのも沢山いました。ヤシ、だとは思うんですが……

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全然種が同定できないです。

 

歩いている最中、こんなものも見つけました。

1m超える高い土の塊です。

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植物の幹を巻き込んでいるんですが、これなんなんでしょう?

最初見た時は蟻塚か?とか思ったんですが、ちょっと違う気もしますよね。謎構造物です。

湿地の向こうの孤島みたいな森にも支柱根が見えます。

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ルートも終盤、もうすぐ出口というところで、急に黒人のおにいさん2人に謎言語で話しかけられました。

何を言ってるのかわからなかったのですが、身振り手振りでついてこいとやるので、ついていくと、なんと……

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超デカイリエワニさんが至近距離でお昼寝してる!!!!!!!!!!!!!!

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2mも離れていない場所です。でっぷでぷ。顎のところがかわいい。皮がごつごつでかっこいい。言葉を失ってしまいますね。3m、4mはありそうな体躯でした。乗っかられたら勝てないよ。

 

湿地の中の池っぽい場所には白い魚もいました。自然豊かだね。

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最後、最初に通った橋を通ると、マレーシア側から謎の海流?みたいなのが川にできていました。

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行きで見かけたワニさんは場所を移動してまた口パカしていました。

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こんなわけで、取り敢えず「マングローブを見たい」という目的を果たし、

その上胎生種子、ワニ、カワウソなども見られたという点では大大大満足な旅でした。

ですが、今回来てみて、マングローブを構成する樹種が複数、しかも支柱根ではないものがそこそこいることがわかったので、次は是非マングローブの樹種を勉強してから来て、同定を楽しみたいです!これだけ豊かな森なのに、低解像度の目で見るだけではもったいないもんね。

あとはやっぱり干潟の生物観察をしたい。湿地の鳥もちゃんと見たい。膝根を見つけたい。木を登るカニとか見てみたい。……欲は止まりません。絶対もう一回来たいと思います!

 

 

P.S. 帰りがけ、何故かヘクソカズラっぽい花を見つけました。

すごく似てない????

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*1:一応注釈しておくと、ヒルギの種類を同定するときは、一般的な植物の同定のように葉や幹や花、胎生種子……も勿論駆使するのですが、加えて根の形状もヒルギによって違うので、それも使うことができます。面白いですね!興味がある人は、沖縄のオヒルギ、メヒルギ、ヤエヤマヒルギの違いなどを検索してみてはいかがでしょうか。